『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』第三話。

なんとか、『もしマン』第三話のアップです。

一回の分量があまり増えすぎても読みにくいので、バランスを取るのが難しいですね;
大事な内容に入っていますので、きちんとわかるようにしていこうと思います(・・;)



■プロローグ
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-395.html
■第一話
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-399.html
■第二話
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-403.html

↑未読の方は過去ログからどうぞ。




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『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』

■第三話

 合格発表の日の夜。とっくに自宅に戻ってきていた【ヒビキ】、パジャマ姿のまま二階の自室の机に突っ伏して、うたた寝中。

【ヒビキ】「……くー、くー……」

●【ヒビキ】:トウキョウ学園新入生の少女。明るいオタク妹キャラ。

【ヒビキ】「う、ん――はっ?」

 聞き慣れたバイクのエンジン音がして、目を覚ます【ヒビキ】。机から顔を引き剥がす。
 部屋のカーテンを少し開けると、兄がバイクをガレージに停めるのが見えた。
 寝惚け眼をこすりながら、ちらりと部屋の時計を確認すると、すでに深夜。少しふくれる【ヒビキ】。

【ヒビキ】「お兄ちゃんたら……もー!」

 エンジン音が止まり、やがて兄の【ジュンイチ】が家に入って来る。

【ジュンイチ】「ふわああ。風呂は起きてからでいいか~」

●【ジュンイチ】:トウキョウ学園卒業生、男。【ヒビキ】の兄で、現役クリエイター。

 革のジャケットを脱ぎながら、気だるそうに二階への階段を上ってくる【ジュンイチ】。そこを待ち構えるように、自室から出てくる【ヒビキ】。

【ヒビキ】「お兄ちゃん、遅ーいっ」
【ジュンイチ】「なんだ? 【ヒビキ】? ――お前さん、まだ起きてたのか?」
【ヒビキ】「お前さん、じゃないよ。『ちと急用』ってメールひとつよこしただけで、こっちのメールには返信ひとつしてくれないし! 今日は、あたしが合格しようが不合格だろうが――家族そろって一緒にご飯食べようって、お母さんたちと約束してたのに……」
【ジュンイチ】「あ、そうだっけ? 悪い、すっかり忘れてた」
【ヒビキ】「……。こ、これだもん、お兄ちゃんって~」
【ジュンイチ】「ああ、【ヒビキ】からの催促のメールは、それかあ。ほんと悪かったな」

 ぽん、と【ジュンイチ】の手が、【ヒビキ】の頭にやさしく触れた。
 一階にいる両親を起こさないよう、明かりの点けられていない二階の廊下で、こっそり赤くなる【ヒビキ】。

【ヒビキ】「そ、そんなんじゃないもんっ。別に、待ちわびてたとかじゃなくて……そ、相談したいこともあったからで。あ」

 はっ、とする【ヒビキ】。自分が兄の帰宅を待ち構えていた理由を思い出す。

【ヒビキ】「そうだよ、お兄ちゃん! あたし、どうしても訊いておきたいことがあるの。実は今日、トウキョウ学園でね――?」
【ジュンイチ】「ん、それ。もしかして、『非実在青少年』がどうたら、ってヤツのことか?」
【ヒビキ】「!! お兄ちゃん、知ってたの?」
【ジュンイチ】「しっ。夜中なのに声がでかいって」
【ヒビキ】「あ、ごめん……」
【ジュンイチ】「――とりあえず、俺の部屋で話すか。実はそのこともあってな、ちょいとせわしなくいろいろ聞き回ってたんだぜ」
【ヒビキ】「ふえっ、そうだったの?」
【ジュンイチ】「朝会った、【フジモト】センセがいただろ? あの人、マンガ研究会の顧問なんだよ。それで仕事終わりを待って、話をな」

●【フジモト】:トウキョウ学園国語教師、女性。「マンガ研究会」顧問。

【ヒビキ】「! あの先生が、マン研の……?」
【ジュンイチ】「他にも、ツテを頼って後輩のとことかをだな。遅くなったけど、けっこう情報は手に入ったぜ?」

 【ヒビキ】の部屋の向かい側にある、兄の個室のドアが開かれる。【ジュンイチ】に導かれ、中に入る【ヒビキ】。
 明かりが灯されたそこは、兄の仕事場も兼ねている。本棚にはマンガや小説、資料本がぎっしり。机の周りには、いろんな玩具やフィギュアが雑然と飾られている。
 机の上だけは作業空間が確保され、イラストの原稿や、デスクトップパソコンが置かれていた。
 普段は遠慮して立ち入らない兄の部屋に、【ヒビキ】はオタクとして、一瞬目を輝かせる。
 が、本棚からあふれ出て床の一部に積まれた書籍に、顔をしかめる。

【ヒビキ】「んもう、お兄ちゃんったら。足の踏み場もないんだからあ」
【ジュンイチ】「……ここは男の仕事場だから、しょーがねえのよ」
【ヒビキ】「なに、それ? あたしが片付け手伝ったげよっか?」
【ジュンイチ】「冗談じゃない。俺に言わせれば、これは完璧な配置なんだぜ?」

 やれやれ、といった顔の【ジュンイチ】、パソコンの電源を入れる。ジャケットのポケットから取り出した携帯電話から、ストラップ型のUSBメモリーを外す。

【ジュンイチ】「仕事用のいざってときに使うつもりで、今までちーっとも使う機会がなかったんだが。今回ばかりは、こんなこともあろうかと、ってヤツだなー」
【ヒビキ】「? なにかの、データをもらったの? お兄ちゃん」
【ジュンイチ】「そゆこと。――ほら、『学校裏サイト』ってのが、ときどき噂になるだろ?」
【ヒビキ】「あ……学校の生徒たちが集まる、ケータイサイトとかのこと?」
【ジュンイチ】「まあ噂ほどブラックなもんじゃないが。今回の件について、いろいろ生徒たちの中でも、ぽろぽろとやり取りされてる記録を見つけてきたのよ」

 起動したパソコンの画面で、USBメモリーのデータを開く【ジュンイチ】。
 兄に寄り添う【ヒビキ】が見たのは、いくつかのサイトの会話ログなどだった。
 そのひとつを読む【ヒビキ】。

【ヒビキ】「ええと。『トウキョウ学園青少年保護校則改正案全文』……これ?」
【ジュンイチ】「正式名称は、『トウキョウ学園青少年の健全な育成に関する校則』だとかゆーらしいが。目立つのはやっぱりその中の、『非実在青少年』ってキーワードだよな」
【ヒビキ】「! そう、それなんだよっ。よくわからなかったんだけど、いったいなんなの、それって?」
【ジュンイチ】「原文にちゃんと目を通してみるとだな。『年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの。以下「非実在青少年」という』――とある。まったく」
【ヒビキ】「? ? ?」
【ジュンイチ】「難しい言葉で書かれちゃいるが……要するにな」
【ヒビキ】「う、うん」
【ジュンイチ】「対象は、実在する人間じゃなくて。マンガやアニメに出てくる二次元のキャラクターについて、『見た目が十八歳未満だったら「非実在青少年」って造語で、カテゴライズするぜ』って話なわけだ」
【ヒビキ】「造語で、カテゴライズ? 二次元のキャラを? はあ?」
【ジュンイチ】「もちろんこんな妙ちきりんな造語をつくったのには、目的があるわけで。……健全な教育のために、学園内に氾濫するマンガ本とかを、一斉に排除するんだと」
【ヒビキ】「え、えええええ? あの、トウキョウ学園で?」

 びっくりする【ヒビキ】。神妙な面持ちの【ジュンイチ】。

【ヒビキ】「だ、だって……。トウキョウ学園って、県内47高校のうちで一番、マンガやアニメで盛り上がってたんじゃあ? 売店にマンガ専門の、『SHOPアキバ』だってあるのに! ううん、それだけじゃなくて!」
【ジュンイチ】「授業中には見ないとか、分別さえつけりゃあ、まあ取り上げられたりはしなかったわな? それが独自の校風だったわけで」
【ヒビキ】「そうだよ! だからあたし、トウキョウ学園を受験したんだし。――だいたい同人イベントだってやっちゃうんだから! しかもそれで収益も出してて、学園の運営資金にもプラスになってたはずだよ? それを、なんでっ」
【ジュンイチ】「代々の学園長は、一応黙認してたよな。最近変わった、【ハトヤマ】学園長はどーだかしらんけど」

●【ハトヤマ】:トウキョウ学園の現学園長、男。あだ名は「ルーピー」。

【ジュンイチ】「しかし、問題がなかったわけじゃねえ。学内のイベントなのに、エロ同人誌が公然と取引されたりもしてたしな」
【ヒビキ】「あっ。そ、それは……うん」
【ジュンイチ】「描き手が未成年っつー、論外な場合も希にあったわけだが。だからある程度の規制は、やむなしってところではあるんだ。いつ来るかってのが、今になったってだけで。しかし――」
【ヒビキ】「って、あれ? そうだよ、『非実在青少年』って、おかしくない?」

 【ヒビキ】、「非実在青少年」についての説明文を読み直す。

【ヒビキ】「だってこの定義だと、『見た目が十八歳より下』なら、どんなキャラも当てはまることになっちゃうよ? だったら……あたしたちみたいな、高校生のキャラクターなんか、それだけでダメってこと?」
【ジュンイチ】「ま、そうなるわな。書かれてるとおりだと、エロじゃなくてもアウトだよな」
【ヒビキ】「は? え?」
【ジュンイチ】「もっと言えば、十八歳以上のキャラが子供に『見えた』だけでもアウトになるか、これだと。いや、文面からだとそれ以外解釈できねーわけだが」
【ヒビキ】「……おかしいよ、それ? 変だよ? なんでー?」
【ジュンイチ】「だいたい、二次元を規制して三次元は放置ってのが、とんちきだっての。エロを取り締まるのなら、まず逆だろう? どういう発想なんだか。クリエイターの俺にも、さっぱりだ」
【ヒビキ】「ええっと。二次元のキャラを……むしろ、実在するかのように扱うために、この『非実在青少年』って言葉をつくってる?」
【ジュンイチ】「そうとしか、読めないよなあ?」
【ヒビキ】「――実在しないから、わざわざ非実在ってつけてるのに。それを、規制の対象に? え、え?」
【ジュンイチ】「まったく。読めば読むほど、頭痛くなってくるぞ? これ」

 しかめ面の【ジュンイチ】、やがて大きなあくびを漏らす。

【ジュンイチ】「やべ、そろそろ限界だな、俺……くああ」

 すると【ジュンイチ】、USBメモリーのデータをパソコン内にコピー。
 その後、コピーもとのデータが入ったままのUSBメモリーを抜いて、【ヒビキ】に渡す。

【ヒビキ】「ふえっ? お兄ちゃん?」
【ジュンイチ】「俺は、一通り目を通して、センセと一緒に憤慨してきた。とりあえず無駄に疲れちまったよ……やれやれ。寝る、もう寝る。思い切り寝るぞ、いいか? つーか、仕事の締め切りもあるっての」
【ヒビキ】「う、うん。じゃああたしも、ちゃんと全部読んでみるね?」
【ジュンイチ】「そーだな。【ヒビキ】、お前さん自身のことだ――いいか?」
【ヒビキ】「?」
【ジュンイチ】「よく見て、聞いて。それで、考えろ。自分でな」

 パソコンの電源を落とす【ジュンイチ】、そのまま着替えもせずに、横のベッドへ移動。

【ジュンイチ】「俺は俺で、考えて……。やれることを、また……ぐー」

 ベッドの上に倒れ込むと、すぐにいびきをかき始める【ジュンイチ】。

【ヒビキ】「……お、お兄ちゃんったらっ」

 少し呆れる【ヒビキ】、しかしベッドからずり落ちていた毛布を、そっと兄にかけてやる。
 爆睡する兄を気遣って、静かに退室。最後に、ドア脇にある蛍光灯のスイッチに手を伸ばす。

【ヒビキ】(見て、聞いて、考えろ……かあ。うん)
【ヒビキ】「やってみるよ。お兄ちゃん」

 疲れている兄の寝顔をもう一度見た後、スイッチをオフにして、消灯する【ヒビキ】。
 きゅっ、と受け取ったUSBメモリーを握りしめる。

【ヒビキ】(仕事で疲れてるのに、こんな遅くまで、いろいろ調べてくれたんだ……)
【ヒビキ】「ありがとう。おやすみなさい――大好き、だよっ」

 耳まで赤くなる【ヒビキ】、兄の部屋のドアを閉じる。

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■今回のポイント
・トウキョウは、マンガやアニメによって多くの利益を得ていた。むしろ推進する動きもあった。
・マンガやアニメの規制は必要でも、その定義が曖昧すぎる。
・とにかく、「非実在青少年」という造語が珍妙。
http://fr-toen.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-cbc1.html





といったところで、今回は区切らせていただきました。
本当は、もう少し突っ込んでおきたかったのですが……次回に持ち越し、というところでーm(_ _)m

そろそろ『非実在青少年<規制反対>読本』に寄稿した内容に、関係していく予定なのですが。さて。



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気力だけが原動力の「でたとこ不定期連載」です。応援コメントをいただけなくても、リンクを貼って紹介してくださるだけでも、十分にやる気が出ます!
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