『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』第五話。


お待たせしました。『もしマン』第五話です~m(_ _)m

今回はちょっと、短めかも?
いえ、シーンの都合でそうなっているだけなのですが。でも重要人物が出て来ますよー。




■プロローグ
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-395.html
■第一話
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-399.html
■第二話
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-403.html
■第三話
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-409.html
■第四話
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-434.html


↑未読の方は過去ログからどうぞ。




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『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』

■第五話

 翌朝――自室のノートパソコンの前で、窓から差し込む朝日に気付く【ヒビキ】。

●【ヒビキ】:トウキョウ学園新入生の少女。明るいオタク妹キャラ。

【ヒビキ】「お……終わったーーー! ふはあ~っ」

 疲れ切った様子で、机に突っ伏す【ヒビキ】。
 パソコンの画面には、「送信完了」の表示が。

【ヒビキ】「メアドのわかってる文化系クラブの代表には、全部メールできたよね?」
【ヒビキ】「デッドラインの18日まで、もう残り10日もないけれど」
【ヒビキ】「あたしにできることは……とりあえず、これで」

 パソコンの電源を落とすなり、ふらふらと自室のベッドに向かう【ヒビキ】。
 そのまま倒れるように布団に入る。

【ヒビキ】(やったよね、あたし……?)
【ヒビキ】(……ううん。こんなことに、どれくらい効果があるのかなんて、さっぱりわかんなくて)
【ヒビキ】(それでも――)

 やがて夢も見ずに、寝入る【ヒビキ】。
 ――だが数時間後、突然の電話に叩き起こされる。

【ヒビキ】「わひゃうっ!? あー、うー……?」

 寝惚け眼をこすりながら、ベッドから手を伸ばす【ヒビキ】。
 鳴り響いているのが、枕元の定位置にほっぽり出していた、自分の携帯電話だと知る。

【ヒビキ】「誰え? ま、まだお昼前じゃない? あんまり寝れてないのにぃ~」
【ヒビキ】「? 知らない番号だ……」
【ヒビキ】「ふわあああ、はーい。もしもし~?」

 あくびをしながら、何も考えずに電話に出る【ヒビキ】。

【声】『あの、トウキョウ学園新入生の、【ヒビキ】さんの電話でしょうか?』
【ヒビキ】「はい……そうです、けど? ええと」
【声】『突然の電話、失礼します。僕は――メールをいただいた演劇部の、【ワタリ】といいます』
【ヒビキ】「! え、えっ?」

●【ワタリ】:演劇部副部長。声優志望でオタク。以降、【ヒビキ】に情報をリークしてくれることになる男子生徒。

【ワタリ】『メールに電話番号が書かれていたので、思い切ってかけてみたんです。今、大丈夫ですか?』
【ヒビキ】「あっ! は、はいっ。……そう、あたしがのせたんでした!」
【ヒビキ】(こっちの素性をはっきりさせないと、こういう話は訊いてもらえないって、ネットで調べたアドバイスにはのってたから!)
【ヒビキ】(そうだよ。あたし、出したメールには一応、ケータイの番号も書いておいたんだっけ!)
【ヒビキ】「――だ、大丈夫です。はいっ」

 ベッドの上で起き上がり、正座する【ヒビキ】。
 ついでにぱちん、と手のひらで頬を貼って、眠気を飛ばす。

【ヒビキ】「トウキョウ学園の、演劇部の方ですか? メール、読んでくれたんですか? じゃあ」
【ワタリ】『ええ。僕もオタクなので』
【ヒビキ】「あ、そうなんですか?」
【ワタリ】『声優志望で、演劇部に入ったんですよ。そこで今は、副部長をやらせてもらってます』
【ヒビキ】「わあ! 声優ですか?」
【ワタリ】『ま、よくある話です』

 電話の向こうで苦笑する【ワタリ】。

【ワタリ】『それで今回の「非実在青少年」関連については、もちろん反対の立場なんです。いろいろ、どうにかしようと議会の方では動いているのですけれど』
【ヒビキ】「! そ、そうなんですか?」
【ワタリ】『はい。……演劇部は、ちょうど都合のいい立ち位置なんですよ。文化部連合所属ですけど、ほら、やってることはけっこう体育会系に近いんですよね。体力づくりのトレーニングとかで、体育会のクラブとは、よく一緒になったりもしますし』
【ヒビキ】「? ? ?」
【ワタリ】『うん、ですから。――規制賛成派の動きも、うまく把握できちゃうんですよ』
【ヒビキ】「あ。そういうことなんですね?」
【ワタリ】『ええ。そんなときにちょうど、【ヒビキ】さんから規制反対お願いのメールをいただいて……マン研とかからは毎日のように、反対のメールはもらってるんですが。【ヒビキ】さんのような一般生徒から届いたのが、実は初めてだったもので。思わず電話しちゃいました』
【ヒビキ】「へ? 初めて、なんですか?」
【ワタリ】『はい』
【ヒビキ】「そ、そっか……やっぱりこの問題って、あんまり騒ぎになってないんですね……」

 さすがにショックを受ける【ヒビキ】。

【ヒビキ】「それにあたしなんか、まだ入学が決まっただけの生徒だし」
【ワタリ】『いえ、何人かには直接、学校でぼやかれたりすることはあるんですけどね。でも【ヒビキ】さんのように、きちんとした意見としてまとめて、こうしてメールをくれたのは初めてのケースですよ』
【ヒビキ】「は、はあ」
【ワタリ】『そこは、【ヒビキ】さんもご存じの通り。生徒会側の、恣意的な議会スケジュールなどが関係しているわけですが』
【ヒビキ】「あっ。短期間で決めちゃおうとしてるのとかですね?」
【ワタリ】『そうです。だからこそ危機感を覚えた【ヒビキ】さんが、メールを送ってくれたわけで。ただ……やはり一人では、その効果は薄いです』
【ヒビキ】「え。うっ、や、やっぱり……」
【ワタリ】『でも――これが大勢集まれば、反対派の強い力になりますよ!』
【ヒビキ】「ふえっ?」
【ワタリ】『議会では、賛成派が「反対する生徒なんかいない」というスタンスで、押し切ろうとしてるんです。ですから、きちんとした意見がまとまってこちらに届くなら、それを反対材料にできるわけです!』
【ヒビキ】「! それ、まだ間に合うんですか?」
【ワタリ】『――正直なところ、ここ数日が勝負だとは思います。18日にほぼ、決着がつきますから……いえ、議会は15日には始まりますので』
【ヒビキ】「今日が、ええと……もう10日ですよね?」

 慌てて部屋のカレンダーで、日付を確認する【ヒビキ】。

【ヒビキ】「わ! あ、あと5日しかないんですか?」
【ワタリ】『はい。だから、急ぐわけです。もちろん僕の方からも、他の筋からアプローチをかけていますが……それをちょっと【ヒビキ】さんの方からも、手伝っていただけないでしょうか?』
【ヒビキ】「はい? あたしが?」
【ワタリ】『ええ。もうほんとに時間がないですから。より効率のいいやり方をするしか、手はありません』

 しかし【ワタリ】の口調、どこか沈んでいる。

【ワタリ】『いえ、それでどこまで効果を上げるかなんてさえ、わからない状況ですが』
【ヒビキ】「……そ、そんなに劣勢なんですか?」
【ワタリ】『正直――現時点ではもう、絶望的なんです』
【ヒビキ】「そ、そんな!」
【ワタリ】『この問題が持ち上がってから、少数の反対派は必死に抵抗してきました。でも……とにかく、まず規制のことを知らない、という人が圧倒的なんです。知られていないことには反対の声が集まるはずもありませんし。いえ、まず【ヒビキ】さんのように、「手当たり次第にやってみよう」という人が少なくて』
【ヒビキ】「あー。ま、まああたし、『とりあえずメール送っちゃえ!』で行動しただけですけど。あは、あはは」
【ワタリ】『いえ。そういうのが大事なんです。結果的にこうして、僕が電話をかけるにまで至りましたし』
【ヒビキ】「あ……」
【ワタリ】『ただ、わかるんです。いざ反対の声を上げようとしても、「どうしたらいいのかわからない」というのが、普通の反応だってことは。でも――僕は賭けてみたいんです』
【ヒビキ】「えっ? なにを?」
【ワタリ】『僕や【ヒビキ】さんと同じように、反対したいと願う大勢の、声の力を』
【ヒビキ】「……。きっと、いますよ。だってマンガやアニメが好きな生徒って、たくさんいるはずだもん!」

 つい微笑んでしまう【ヒビキ】。
 電話口の向こうで【ワタリ】も笑った気配がする。

【ワタリ】『ええ! で、なぜ僕が【ヒビキ】さんに電話をしたのか、という話になるのですけれど』
【ヒビキ】「! あたしに協力できることがある、ってわけですよね? ――もちろんします! やりますっ!」
【ワタリ】『ありがとう。じゃあ、まず……』
【ヒビキ】「わ、わっ! ちょっと待ってくださいね、今メモとりますから~!」

 【ヒビキ】慌ててベッドから腰を上げる。机の引き出しを開けて、メモ帳と筆記用具を探し出す。
 やがて【ワタリ】が語り出したアドバイスを、きちんとメモして――。

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■今回のポイント
・【ヒビキ】のメールに携帯電話の番号をそえていたことが功を奏した。
・【ワタリ】は一次情報を得られる人物だった。
・ただし【ワタリ】はリークしているのがばれるとまずい位置にいた。
・だからこそ【ヒビキ】を通してうまく情報を流した。




というわけで、渡りをつけに来た【ワタリ】さんの登場となりました。

この辺りの顛末は、『非実在青少年<規制反対>読本』に寄稿した中身そのまんま、となっておりますノシ

非実在青少年〈規制反対〉読本非実在青少年〈規制反対〉読本
(2010/06/04)
サイゾー&表現の自由を考える会

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劇中では10日となっていますが、実際には9日に起きた出来事ですね。すみませんー;

ちょっとうっかりしていたので誤差が生じておりますが、以降の展開でそのあたりは問題がない感じなので、修正なしでそのままいこうと思います。いえ、結局9日~10日にかけてまとめて動いたことには、かわりがないので(・・;)
ご容赦ください~。

……問題が出て来たら、きちんとお知らせして、修正をかけようと思いますorz



そんなこんなの、気力だけが原動力の「でたとこ不定期連載」です。
応援コメントをいただけなくても、リンクを貼って紹介してくださるだけでも、十分にやる気が出ます!
どうか、よろしくお願いいたします(^▽^;)
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『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』第四話。

遅くなりましたが、どうにか五月中に、『もしマン』の続きをアップです!(^▽^;)

ひー、いろいろすみません~!m(_ _;)m
超忙しかったんですようう。



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■第一話
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『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』

■第四話

 兄の部屋のドアを閉めて、向かいにある自室に戻る【ヒビキ】。

●【ヒビキ】:トウキョウ学園新入生の少女。明るいオタク妹キャラ。

【ヒビキ】「さーてっ」

 自室の机にある、兄のお古のノートパソコンの電源を入れる。そこに、受け取ったばかりのUSBメモリーを接続し、さっき見たサイトのログをいくつか表示させた。

【ヒビキ】(ええと……。あ、これは?)

 ふと【ヒビキ】、ファイルの中にログ以外のテキスト文書を発見。

【ヒビキ】「これって。ふええっ、【フジモト】先生のまとめメモ? そんなのあるんだ!」

●【フジモト】:トウキョウ学園国語教師、女性。「マンガ研究会」顧問。

【ヒビキ】(そっか、先生も危機感を覚えて――。そうだよね、だって。マン研事態が今回のことで、廃部に追い込まれる形になっちゃって……)
【ヒビキ】(なんで、そんなことに? こうして、学校側が締め付ける形になったから?)
【ヒビキ】(でも……先生の文章に、『不思議なことに、話題に上らない』って書かれてある!)
【ヒビキ】(――! あっ)

 ある一文を見て、息を呑む【ヒビキ】。

【ヒビキ】「『今の状況だとほぼ間違いなく、この校則は通ってしまう!』って!」
【ヒビキ】「でも、それって……じゃあ」
【ヒビキ】(まだ確定してない、ってことだよね? うん、そうだよ)

 【ヒビキ】、学校で風紀委員の【ナナコ】の言っていたことを思い出す。

●【ナナコ】:トウキョウ学園二年生の女子。風紀委員所属で、オタク嫌い?

【ナナコ】『マンガ研究会はこの四月から、廃部が決定している』
【ナナコ】『この三月に通る「青少年保護育成校則」の改正強化にあたって――』

【ヒビキ】「……あの風紀委員の人、三月に通る、って言ってたよね? やっぱり!」
【ヒビキ】「ええと、じゃあ――あっ、この案が提出されたのが、そもそも二月の下旬なの?」

 改めて【フジモト】のメモに目を通す【ヒビキ】。

【ヒビキ】「2月24日って書いてある。今日が3月9日でしょ? ……ほんの、二週間くらい前じゃん! そんな最近だったの?」
【ヒビキ】「こんな急に決まっちゃうものなの? あ……」
【ヒビキ】「はい?」

【フジモト】『2月24日に案が発表されて、生徒が意見を言えたのは25日まで。つまり、たった一日のみだった』

【ヒビキ】「え……嘘? こ、こんな大事な校則なのに?」
【ヒビキ】「一日、だけ? そんな」

 言葉を失う【ヒビキ】。しかし、続けてメモを読んでさらに青くなる。

【フジモト】『生徒会の議会で質問が許されたのは、3月4日の代表質問。それと5日の一般質問のみ』
【フジモト】『ただしこれも数日前には質問を提出しなければならない、という方式』
【フジモト】『要するに、出席した各委員会役員でさえ、検討できるのは3日程度だった』

【ヒビキ】「な……えっ……」
【ヒビキ】「……。議会って、なんなの?」
【ヒビキ】「こんな、やり方でしか動かないものなの?」
【ヒビキ】「質問を提出させるってことは、その場で思いついた疑問をぶつけちゃダメってことだよね? そんなので、十分な話し合いなんてできるの?」
【ヒビキ】「これ、生徒会の会議だよね? なんで、生徒からの意見を聞こうとしないの?」
【ヒビキ】(おかしいよ、こんなの――!)

 やるせない気持ちに打ちのめされる【ヒビキ】、パソコンの前で顔を伏せる。

【ヒビキ】「……こんなことで、マンガやアニメが規制されようとしてるの?」

 悔し涙がこぼれ落ちそうになる。我慢し、顔を上げる【ヒビキ】。

【ヒビキ】「許せない……マンガやアニメが好きで、どうして悪いの?」
【ヒビキ】「あたしたち、なにかした?」
【ヒビキ】「もしかして――オタクは犯罪を引き起こすから、とか、思ってるの?」
【ヒビキ】「そんなのただの偏見じゃない!」
【ヒビキ】「『お米を食べてる人は、みんな犯罪者になる』くらいの、トンチキだよ!」

 熱くなる【ヒビキ】。夜中だということを思い出し、口元を押さえる。
 少し深呼吸して、落ち着くことに。

【ヒビキ】「――これ、ほんとにトウキョウ学園で、決まっちゃうの……?」
【ヒビキ】「あ。ううん、まだ少しだけ猶予はあるよね?」

 見つけるのは【フジモト】が書いた、タイムリミットの記載。

【フジモト】『18日に行われる付託議案審査が重要! そして今月末には投票、ということに』

【ヒビキ】「よ、よくわかんないけど。3月18日に、もう一回だけ、最後の話し合いがされるってこと?」
【ヒビキ】「じゃあ、そこで多くの反対の声を集めれば?」
【ヒビキ】「って――ああああ。あたしに、なにができるっての?」

 頭を抱える【ヒビキ】。大事なことを思い出す。

【ヒビキ】「だってあたしはまだ、トウキョウ学園に合格したばっかりで、正確には生徒ってわけじゃなくてっ。うう、生徒会にどうやってアプローチしたらいいの~!」
【ヒビキ】「時間がないのに! あたしにできることなんて、最初からなくて……!」

 それでも【フジモト】のメモに、必死に目を通し続ける【ヒビキ】。
 すると、少数ながらも反対者がいることを知る。

【ヒビキ】「? ええと……どういうこと?」
【ヒビキ】「『現在、議会の会派は生徒会と体育会の役員で、62名。対して文化部連合会が65名。ただし文化部連合会は一枚岩でなく、反対者が現在、過半数に満たず――』って。え、え?」
【ヒビキ】「文化部連合会、って、文化系クラブの集まりのことだよね?」
【ヒビキ】「そして体育会は、運動部の集まりのことで……」
【ヒビキ】「運動部の生徒たちが中心になって、『非実在青少年』を通そうとしてるってこと?」
【ヒビキ】「それで、文化系クラブの人たちの中には、ちゃんと反対してくれてる人もいて――」
【ヒビキ】(……そうだよ。学校の中にはまだ、オタクに理解のある生徒もいるんだっ)
【ヒビキ】「それも、会議に出られる役員クラスの人が……!」

 そのとき、兄の【ジュンイチ】の言葉を思い出す【ヒビキ】。

●【ジュンイチ】:トウキョウ学園卒業生、男。【ヒビキ】の兄で、現役クリエイター。

【ジュンイチ】『よく見て、聞いて。それで、考えろ。自分でな』

【ヒビキ】「うん……」
【ヒビキ】(自分で、見て。考えるよ、お兄ちゃんっ)
【ヒビキ】「なにかあたしに、できることは――?」

 【ヒビキ】、マウスを操作。他のデータを手当たり次第にチェックしていく。
 すると、トウキョウ学園の委員会役員名簿を発見。

【ヒビキ】「! これ……あ、連絡簿なのかな? 役員の人たちの、メールアドレスが載ってる?」
【ヒビキ】「うひー、い、いいの? こんなの出回ってて?」
【ヒビキ】「あ……。でも、生徒には公開されてるヤツなんだ。各クラブ専用にあてがわれたメアドなのかな?」
【ヒビキ】「メアドがないとこもあるけど。――へー、学校経由で、部室にも手紙まで送れるようになってるし?」
【ヒビキ】「……! 待ってよ? じゃあっ」

 あることを思いつく【ヒビキ】。
 唇を噛んで、しばし逡巡し――。

【ヒビキ】「メールを出せば、あたしでも、直談判できる? 反対してくれる、文化系クラブの役員たちに!」
【ヒビキ】「そ、そうだよ。だって文化部連合会の方が、体育会と生徒会を足した人数より、多かったよね? 65人と、63人で!」
【ヒビキ】「じゃあうまく全員を説得できれば、ひっくり返せる?」
【ヒビキ】(……ほんとにそんなこと、できるの?)

 一瞬悩む【ヒビキ】だが。

【ヒビキ】「でも、ゼロじゃない」
【ヒビキ】「可能性は、ゼロじゃないんだ」
【ヒビキ】「あたしにもまだ、できることがあったんだ」
【ヒビキ】(今はそれで、十分だよ!)

 気を取り直す【ヒビキ】。さっそくパソコンの、メールブラウザを立ち上げる。

【ヒビキ】(どうなるかわかんない。でも)
【ヒビキ】(あたしは……18日のXデーまでにあたしにできる、精一杯のことを!)
【ヒビキ】「さあて。見てなさいよっ」
【ヒビキ】「ふっふっふ。こうなったら文化系クラブの役員全員に、メール出すんだから!」

 ようやく微笑む【ヒビキ】。一生懸命、メールの文章を打ち始める。

【ヒビキ】「ええと。『突然のメール、失礼します』――こんな感じでいいかな? うー」

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■今回のポイント
・議会は、なるべく話し合いの機会を設けないやり方をした。
・【フジモト】の情報が【ヒビキ】に伝わったのは、3月9日のこと。
・3月18日の議会が、最後の話し合いのチャンスだった。
・とにかく時間がなかった。




ようやく、『非実在青少年<規制反対>読本』の内容に入ってきました~。


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気力だけが原動力の「でたとこ不定期連載」です。
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どうか、よろしくお願いいたします(* ̄∇ ̄*)

『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』第三話。

なんとか、『もしマン』第三話のアップです。

一回の分量があまり増えすぎても読みにくいので、バランスを取るのが難しいですね;
大事な内容に入っていますので、きちんとわかるようにしていこうと思います(・・;)



■プロローグ
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■第一話
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■第二話
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『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』

■第三話

 合格発表の日の夜。とっくに自宅に戻ってきていた【ヒビキ】、パジャマ姿のまま二階の自室の机に突っ伏して、うたた寝中。

【ヒビキ】「……くー、くー……」

●【ヒビキ】:トウキョウ学園新入生の少女。明るいオタク妹キャラ。

【ヒビキ】「う、ん――はっ?」

 聞き慣れたバイクのエンジン音がして、目を覚ます【ヒビキ】。机から顔を引き剥がす。
 部屋のカーテンを少し開けると、兄がバイクをガレージに停めるのが見えた。
 寝惚け眼をこすりながら、ちらりと部屋の時計を確認すると、すでに深夜。少しふくれる【ヒビキ】。

【ヒビキ】「お兄ちゃんたら……もー!」

 エンジン音が止まり、やがて兄の【ジュンイチ】が家に入って来る。

【ジュンイチ】「ふわああ。風呂は起きてからでいいか~」

●【ジュンイチ】:トウキョウ学園卒業生、男。【ヒビキ】の兄で、現役クリエイター。

 革のジャケットを脱ぎながら、気だるそうに二階への階段を上ってくる【ジュンイチ】。そこを待ち構えるように、自室から出てくる【ヒビキ】。

【ヒビキ】「お兄ちゃん、遅ーいっ」
【ジュンイチ】「なんだ? 【ヒビキ】? ――お前さん、まだ起きてたのか?」
【ヒビキ】「お前さん、じゃないよ。『ちと急用』ってメールひとつよこしただけで、こっちのメールには返信ひとつしてくれないし! 今日は、あたしが合格しようが不合格だろうが――家族そろって一緒にご飯食べようって、お母さんたちと約束してたのに……」
【ジュンイチ】「あ、そうだっけ? 悪い、すっかり忘れてた」
【ヒビキ】「……。こ、これだもん、お兄ちゃんって~」
【ジュンイチ】「ああ、【ヒビキ】からの催促のメールは、それかあ。ほんと悪かったな」

 ぽん、と【ジュンイチ】の手が、【ヒビキ】の頭にやさしく触れた。
 一階にいる両親を起こさないよう、明かりの点けられていない二階の廊下で、こっそり赤くなる【ヒビキ】。

【ヒビキ】「そ、そんなんじゃないもんっ。別に、待ちわびてたとかじゃなくて……そ、相談したいこともあったからで。あ」

 はっ、とする【ヒビキ】。自分が兄の帰宅を待ち構えていた理由を思い出す。

【ヒビキ】「そうだよ、お兄ちゃん! あたし、どうしても訊いておきたいことがあるの。実は今日、トウキョウ学園でね――?」
【ジュンイチ】「ん、それ。もしかして、『非実在青少年』がどうたら、ってヤツのことか?」
【ヒビキ】「!! お兄ちゃん、知ってたの?」
【ジュンイチ】「しっ。夜中なのに声がでかいって」
【ヒビキ】「あ、ごめん……」
【ジュンイチ】「――とりあえず、俺の部屋で話すか。実はそのこともあってな、ちょいとせわしなくいろいろ聞き回ってたんだぜ」
【ヒビキ】「ふえっ、そうだったの?」
【ジュンイチ】「朝会った、【フジモト】センセがいただろ? あの人、マンガ研究会の顧問なんだよ。それで仕事終わりを待って、話をな」

●【フジモト】:トウキョウ学園国語教師、女性。「マンガ研究会」顧問。

【ヒビキ】「! あの先生が、マン研の……?」
【ジュンイチ】「他にも、ツテを頼って後輩のとことかをだな。遅くなったけど、けっこう情報は手に入ったぜ?」

 【ヒビキ】の部屋の向かい側にある、兄の個室のドアが開かれる。【ジュンイチ】に導かれ、中に入る【ヒビキ】。
 明かりが灯されたそこは、兄の仕事場も兼ねている。本棚にはマンガや小説、資料本がぎっしり。机の周りには、いろんな玩具やフィギュアが雑然と飾られている。
 机の上だけは作業空間が確保され、イラストの原稿や、デスクトップパソコンが置かれていた。
 普段は遠慮して立ち入らない兄の部屋に、【ヒビキ】はオタクとして、一瞬目を輝かせる。
 が、本棚からあふれ出て床の一部に積まれた書籍に、顔をしかめる。

【ヒビキ】「んもう、お兄ちゃんったら。足の踏み場もないんだからあ」
【ジュンイチ】「……ここは男の仕事場だから、しょーがねえのよ」
【ヒビキ】「なに、それ? あたしが片付け手伝ったげよっか?」
【ジュンイチ】「冗談じゃない。俺に言わせれば、これは完璧な配置なんだぜ?」

 やれやれ、といった顔の【ジュンイチ】、パソコンの電源を入れる。ジャケットのポケットから取り出した携帯電話から、ストラップ型のUSBメモリーを外す。

【ジュンイチ】「仕事用のいざってときに使うつもりで、今までちーっとも使う機会がなかったんだが。今回ばかりは、こんなこともあろうかと、ってヤツだなー」
【ヒビキ】「? なにかの、データをもらったの? お兄ちゃん」
【ジュンイチ】「そゆこと。――ほら、『学校裏サイト』ってのが、ときどき噂になるだろ?」
【ヒビキ】「あ……学校の生徒たちが集まる、ケータイサイトとかのこと?」
【ジュンイチ】「まあ噂ほどブラックなもんじゃないが。今回の件について、いろいろ生徒たちの中でも、ぽろぽろとやり取りされてる記録を見つけてきたのよ」

 起動したパソコンの画面で、USBメモリーのデータを開く【ジュンイチ】。
 兄に寄り添う【ヒビキ】が見たのは、いくつかのサイトの会話ログなどだった。
 そのひとつを読む【ヒビキ】。

【ヒビキ】「ええと。『トウキョウ学園青少年保護校則改正案全文』……これ?」
【ジュンイチ】「正式名称は、『トウキョウ学園青少年の健全な育成に関する校則』だとかゆーらしいが。目立つのはやっぱりその中の、『非実在青少年』ってキーワードだよな」
【ヒビキ】「! そう、それなんだよっ。よくわからなかったんだけど、いったいなんなの、それって?」
【ジュンイチ】「原文にちゃんと目を通してみるとだな。『年齢又は服装、所持品、学年、背景その他の人の年齢を想起させる事項の表示又は音声による描写から十八歳未満として表現されていると認識されるもの。以下「非実在青少年」という』――とある。まったく」
【ヒビキ】「? ? ?」
【ジュンイチ】「難しい言葉で書かれちゃいるが……要するにな」
【ヒビキ】「う、うん」
【ジュンイチ】「対象は、実在する人間じゃなくて。マンガやアニメに出てくる二次元のキャラクターについて、『見た目が十八歳未満だったら「非実在青少年」って造語で、カテゴライズするぜ』って話なわけだ」
【ヒビキ】「造語で、カテゴライズ? 二次元のキャラを? はあ?」
【ジュンイチ】「もちろんこんな妙ちきりんな造語をつくったのには、目的があるわけで。……健全な教育のために、学園内に氾濫するマンガ本とかを、一斉に排除するんだと」
【ヒビキ】「え、えええええ? あの、トウキョウ学園で?」

 びっくりする【ヒビキ】。神妙な面持ちの【ジュンイチ】。

【ヒビキ】「だ、だって……。トウキョウ学園って、県内47高校のうちで一番、マンガやアニメで盛り上がってたんじゃあ? 売店にマンガ専門の、『SHOPアキバ』だってあるのに! ううん、それだけじゃなくて!」
【ジュンイチ】「授業中には見ないとか、分別さえつけりゃあ、まあ取り上げられたりはしなかったわな? それが独自の校風だったわけで」
【ヒビキ】「そうだよ! だからあたし、トウキョウ学園を受験したんだし。――だいたい同人イベントだってやっちゃうんだから! しかもそれで収益も出してて、学園の運営資金にもプラスになってたはずだよ? それを、なんでっ」
【ジュンイチ】「代々の学園長は、一応黙認してたよな。最近変わった、【ハトヤマ】学園長はどーだかしらんけど」

●【ハトヤマ】:トウキョウ学園の現学園長、男。あだ名は「ルーピー」。

【ジュンイチ】「しかし、問題がなかったわけじゃねえ。学内のイベントなのに、エロ同人誌が公然と取引されたりもしてたしな」
【ヒビキ】「あっ。そ、それは……うん」
【ジュンイチ】「描き手が未成年っつー、論外な場合も希にあったわけだが。だからある程度の規制は、やむなしってところではあるんだ。いつ来るかってのが、今になったってだけで。しかし――」
【ヒビキ】「って、あれ? そうだよ、『非実在青少年』って、おかしくない?」

 【ヒビキ】、「非実在青少年」についての説明文を読み直す。

【ヒビキ】「だってこの定義だと、『見た目が十八歳より下』なら、どんなキャラも当てはまることになっちゃうよ? だったら……あたしたちみたいな、高校生のキャラクターなんか、それだけでダメってこと?」
【ジュンイチ】「ま、そうなるわな。書かれてるとおりだと、エロじゃなくてもアウトだよな」
【ヒビキ】「は? え?」
【ジュンイチ】「もっと言えば、十八歳以上のキャラが子供に『見えた』だけでもアウトになるか、これだと。いや、文面からだとそれ以外解釈できねーわけだが」
【ヒビキ】「……おかしいよ、それ? 変だよ? なんでー?」
【ジュンイチ】「だいたい、二次元を規制して三次元は放置ってのが、とんちきだっての。エロを取り締まるのなら、まず逆だろう? どういう発想なんだか。クリエイターの俺にも、さっぱりだ」
【ヒビキ】「ええっと。二次元のキャラを……むしろ、実在するかのように扱うために、この『非実在青少年』って言葉をつくってる?」
【ジュンイチ】「そうとしか、読めないよなあ?」
【ヒビキ】「――実在しないから、わざわざ非実在ってつけてるのに。それを、規制の対象に? え、え?」
【ジュンイチ】「まったく。読めば読むほど、頭痛くなってくるぞ? これ」

 しかめ面の【ジュンイチ】、やがて大きなあくびを漏らす。

【ジュンイチ】「やべ、そろそろ限界だな、俺……くああ」

 すると【ジュンイチ】、USBメモリーのデータをパソコン内にコピー。
 その後、コピーもとのデータが入ったままのUSBメモリーを抜いて、【ヒビキ】に渡す。

【ヒビキ】「ふえっ? お兄ちゃん?」
【ジュンイチ】「俺は、一通り目を通して、センセと一緒に憤慨してきた。とりあえず無駄に疲れちまったよ……やれやれ。寝る、もう寝る。思い切り寝るぞ、いいか? つーか、仕事の締め切りもあるっての」
【ヒビキ】「う、うん。じゃああたしも、ちゃんと全部読んでみるね?」
【ジュンイチ】「そーだな。【ヒビキ】、お前さん自身のことだ――いいか?」
【ヒビキ】「?」
【ジュンイチ】「よく見て、聞いて。それで、考えろ。自分でな」

 パソコンの電源を落とす【ジュンイチ】、そのまま着替えもせずに、横のベッドへ移動。

【ジュンイチ】「俺は俺で、考えて……。やれることを、また……ぐー」

 ベッドの上に倒れ込むと、すぐにいびきをかき始める【ジュンイチ】。

【ヒビキ】「……お、お兄ちゃんったらっ」

 少し呆れる【ヒビキ】、しかしベッドからずり落ちていた毛布を、そっと兄にかけてやる。
 爆睡する兄を気遣って、静かに退室。最後に、ドア脇にある蛍光灯のスイッチに手を伸ばす。

【ヒビキ】(見て、聞いて、考えろ……かあ。うん)
【ヒビキ】「やってみるよ。お兄ちゃん」

 疲れている兄の寝顔をもう一度見た後、スイッチをオフにして、消灯する【ヒビキ】。
 きゅっ、と受け取ったUSBメモリーを握りしめる。

【ヒビキ】(仕事で疲れてるのに、こんな遅くまで、いろいろ調べてくれたんだ……)
【ヒビキ】「ありがとう。おやすみなさい――大好き、だよっ」

 耳まで赤くなる【ヒビキ】、兄の部屋のドアを閉じる。

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■今回のポイント
・トウキョウは、マンガやアニメによって多くの利益を得ていた。むしろ推進する動きもあった。
・マンガやアニメの規制は必要でも、その定義が曖昧すぎる。
・とにかく、「非実在青少年」という造語が珍妙。
http://fr-toen.cocolog-nifty.com/blog/2010/02/post-cbc1.html





といったところで、今回は区切らせていただきました。
本当は、もう少し突っ込んでおきたかったのですが……次回に持ち越し、というところでーm(_ _)m

そろそろ『非実在青少年<規制反対>読本』に寄稿した内容に、関係していく予定なのですが。さて。



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(2010/06/04)
サイゾー&表現の自由を考える会

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気力だけが原動力の「でたとこ不定期連載」です。応援コメントをいただけなくても、リンクを貼って紹介してくださるだけでも、十分にやる気が出ます!
どうか、よろしくお願いいたします~。

『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』 第二話。

どれくらいの人が待っているかは知りませんが、『もしマン』の第二話アップです。

……毎回、ミクシィの関連コミュニティに恥を忍んで宣伝はしているのですが、拡散していただけていないようで残念です。
反対活動としては小さなことかもしれませんが、せめてブログやツイッターにてリンクを貼っていただければな、とお願いするばかりですm(_ _)m



■プロローグ
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-395.html
■第一話
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-399.html

↑未読の方は過去ログからどうぞ。


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『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』

■第二話

 合格発表当日の、トウキョウ学園。無事に合格した【ヒビキ】と【音無】の二人は、ついでに学校見学へ。人の多い正面玄関から離れ、校舎の裏手へと回る。

【ヒビキ】「ええっと、確かこっちの方だと思うんだけど……?」

●【ヒビキ】:トウキョウ学園新入生の少女。明るいオタク妹キャラ。

【音無】「? なにを捜してるのですか、【ヒビキ】ちゃん?」

●【音無】:トウキョウ学園新入生の、【ヒビキ】と同じ中学出身の少女。見た目はおとなしい、黒髪三つ編みタイプ。

【音無】「食堂とかがある方は、あっちですよ? こっちはなんだか、人気があまりなくって……はっ! ま、まさかあえて、わたしと二人っきりになれる場所に!?」
【ヒビキ】「ふえっ? ……あのね、違うってば【音無】さん。確かこっちに、『クラブ棟』があるはずなんだ」
【音無】「クラブ棟?」
【ヒビキ】「そ! だって、どうせ校舎内には入れそうにないしさ。行けるところなんて、そこくらいでしょ? あたし、トウキョウ学園に受かったら、絶対マン研に入ろうと思ってたんだ! それでね?」
【音無】「マン研……あ。『マンガ研究会』ですか?」
【ヒビキ】「うん! 中学にはそういうクラブ、なかったでしょ? ――って、あっ。ごめんね、あたしの勝手で、【音無】さんまでつれてきちゃって。もしかして興味なかった?」
【音無】「そ、そんな! 大丈夫です、完璧です、万全です! だ、だってわたしも、オタクですからー!」
【ヒビキ】「あはは。テンション高いなあ、【音無】さんっ。でもよかった」

 やがて見えて来る、プレハブ造りの建物。はっとする【ヒビキ】。

【ヒビキ】「あ! たぶんあれだよ、クラブ棟って!」
【音無】「そうなんですか?」
【ヒビキ】「うん。お兄ちゃんが言ってたから、プレハブ二階建ての、一階スミの部屋が、マン研の部室なんだって!」
【音無】「……お兄さん? 【ヒビキ】ちゃんの? あ、先程、校門の側にいた……」
【ヒビキ】「あー。実はあたしのお兄ちゃんも、この学校の卒業生なんだ。それも、マン研出身の。それであたし、よく話だけは聞いてたから」
【音無】「お話ですか?」
【ヒビキ】「そ! マン研で、みんなと同人誌つくったとか。合宿して、朝までマンガの話をしたとか。学園祭用に短編アニメまでつくったとか。ううん、それだけじゃなくて! 年に二回も、県内で一番大きな同人イベントもあるし! それから他にもねえ、えーっと」

 歩きながら嬉しそうに話す【ヒビキ】に、【音無】も目を輝かせる。

【音無】「それは、楽しそうですね! たっぷりのオタクトークとか……もうそれだけで、ステキです!」
【ヒビキ】「うん! 実はあたしがこの学校を受験したのって、そんなお兄ちゃんのせいでもあるんだー。だってさ、卒業した今でもマン研でのこと話すんだもん。もう、悔しくって――あ」

 急に【音無】を振り返り、【ヒビキ】少し照れる。

【ヒビキ】「お、【音無】さん。今の、うちのお兄ちゃんにはナイショだからね? なにかあっても、絶対言わないでっ」
【音無】「はっ。そ、それはもしや、妹萌えというものですか? お兄さんラブなのですか?」
【ヒビキ】「ち、違うってば! そんなんじゃないって、絶対!」

 全力で否定する【ヒビキ】。しかしポケットの中にある、兄からもらった合格祈願のお守りを、つい握りしめてしまう。顔まで真っ赤に。

【ヒビキ】「あ、あたしはただ……お兄ちゃん、すぐ調子に乗るから! というか、きっかけはお兄ちゃんの話だったけどさ、そうじゃなくて。――ここのマン研が充実してたのは、このトウキョウ学園の校風が、学生の自主性を重んじる自由なところにあるわけで。うん、そこに惹かれて受験したんだってばっ」
【音無】「あ、そうですね。トウキョウ学園は、県内の高校で、一番大きな学校ですから。なにかと他校への影響力も大きいために、そのぶんリベラルなんですよね?」
【ヒビキ】「うん。……だからこそ、同人とかアニメとか、外部から人を集めた大きなイベントまでやっちゃうわけで! 購買部にはマンガ専門の『SHOPアキバ』ってのまであるんだって! そういうの、他にないよね。あははっ」

 笑顔を見せる【ヒビキ】。

【ヒビキ】「【音無】さん。一緒に高校生活、満喫しようね?」
【音無】「! はい、【ヒビキ】ちゃん! ……一緒に、一緒……うふ、ふふふ」
【ヒビキ】「あっ、あそこかな? マン研の部室!」

 クラブ棟の一画へと辿り着く、【ヒビキ】と【音無】。

【ヒビキ】「春休み中だけど……お兄ちゃんの話だと、いつも誰かが入り浸ってたんだってさ! もしかしたら今も、何人かセンパイたちがいるかもね?」
【音無】「あ、そうなんですか? じゃあいきなり、ご挨拶できますね?」
【ヒビキ】「うん! あー、楽しみい~」
【音無】「……わ、わたしは少し、どきどきします。ううっ」
【ヒビキ】「も、もー、【音無】さんったらあ。そんなにあたしにしがみついてこなくったって、平気だよ。気楽にいこうよ、ね? あはは」

 けれども部室の前まで来て、【ヒビキ】はぎょっとさせられる。

【ヒビキ】「!? え、なに……これ?」
【音無】「どうかしたんですか、【ヒビキ】ちゃ――あっ?」

 部室のドアに異変が。マン研のドアにはなんと、ガムテープの大きな×印が貼られていた。
 さらにドアの小窓に、でかでかと貼り紙までも。

【ヒビキ】「えっ。封鎖、されてる? なんで?」
【音無】「! 【ヒビキ】ちゃん、これ、なにか書いてて……」
【ヒビキ】「……はい? 『青少年問題協議会からの通達』?」

 貼り紙の文字に目を通そうとしたとき、突然【ヒビキ】たちに鋭い声が浴びせられる。

【ナナコ】「そこでなにをしている、君ら!」

●【ナナコ】:トウキョウ学園二年生の女子。風紀委員所属で、「青少年問題協議会」メンバー。ビン底メガネ少女。

【ナナコ】「その恰好……うちの生徒じゃないな?」

 トウキョウ学園の制服に、風紀委員の腕章をつけた【ナナコ】、ファイルを手に登場。
 じろり、と【ヒビキ】と【音無】を睨む。

【ヒビキ】「いえ、あの。あたしたちは、ええと。いわゆる新入生で」
【音無】「は、はい」
【ナナコ】「新入生? ああ、合格したばかりの新一年生か……。浮かれるのもいいが、君らが正式に我が校の生徒となるのは、入学式を迎えてからだぞ? で、もう一度訊く。ここでなにをしている?」
【ヒビキ】「その、ですね。せっかく合格したんだし、クラブとか、ちょっと見学していこうかなあって。それで」
【ナナコ】「――勝手な行動こそ、風紀の乱れの第一歩だ」

 風紀委員の腕章を見せびらかす【ナナコ】。

【ナナコ】「いつまでも子供気分では困る。クラブ勧誘は抜けがけなしで、公平に行われるよう、定められているものだ。それくらい察して、自覚を持った行動をしたまえ」
【ヒビキ】「は、はあ……」
【音無】「……あの。すみませんでした」
【ナナコ】「しかし――そうか、君らは、マンガ研究会へ入部するつもりか?」

 【ヒビキ】たちの背後にあった部室のドアを見て、【ナナコ】に嘲笑が浮かぶ。

【ナナコ】「どのみち、無駄なことだったな。マンガ研究会はこの四月から、廃部が決定している」
【ヒビキ】「へ? な……」
【音無】「!? ど、どういうことですかっ?」

 驚く【ヒビキ】と【音無】。冷静な【ナナコ】は持っていたファイルを開き、ちらりと確認。

【ナナコ】「決まっている。この三月に通る『青少年保護育成校則』の改正強化にあたって、恐れをなした部員たちが、次々に退部を届け出たのだ。規定人数に達しないクラブは、部としては認められない。だから廃部、だ」
【ヒビキ】「……!?」
【ナナコ】「四月には部室は明け渡してもらい、別の部が入ることに仮決定している。まあその選定をするために、我々風紀委員が借り出されているわけだが?」

 【ナナコ】のファイルには、クラブの名簿と備品リストがずらり。
 呆然とする【ヒビキ】たち。

【ヒビキ】「廃部……? 青少年保護育成、校則? 改正?」
【音無】「マン研が、なくなるんですか? それも、この四月にっ?」
【ナナコ】「ああ――。君らも、オタク、というやつか」

 すると【ナナコ】、嫌悪感をあらわに。

【ナナコ】「オタクなんてものは、いなくなればいいんだ。そんなのは、ある種の障害のようなものだからな!」
【ヒビキ】「!!」
【音無】「……えええ!?」
【ナナコ】「まったく、くだらない。そう、オタクは認知障害を起こしているのだ。君らも目を覚ました方がいいぞ?」
【ヒビキ】「ふえっ? なっ、な、な――なんですか、それえ!? マンガとかアニメが好きなのは、頭がおかしいってことなんですか?」
【ナナコ】「少なくとも、認知障害を起こしているという見方を、主流化する必要はあるだろうな」
【ヒビキ】「はあ? せ、センパイに失礼かもだけど……その考えは、変だよ!」
【音無】「そうです! いったいなんの根拠があって――!」
【ナナコ】「あー、そういうのはいい。同じような抗議は、この三月までにうんざりするくらい聞かされたよ。何通も、風紀委員会にメールが来たりね。まったく、ひどい暴力行為だ!」
【ヒビキ】「暴力? え、だって……ただ、抗議しただけなのに? じゃあどうやって、反対すればっ」
【ナナコ】「反対意見というものは、認知障害を治してからするものだろう? まともでない者の相手など、我々がする必要はない! 校則規制に従って、粛々とことをすすめるばかりだ」

 ぴしゃりと言い放つ【ナナコ】に、唖然とする【ヒビキ】に【音無】。
 それを「反論できない」と受け取った【ナナコ】、ファイルを閉じて二人に背を向ける。

【ナナコ】「わかったなら、君らはさっさと帰りたまえ。いいな?」

 【ナナコ】立ち去る。しばらく顔を見合わせたまま、動けない【ヒビキ】に【音無】。
 やがて、頭を振る【ヒビキ】。

【ヒビキ】「なんだったの……今の?」
【音無】「マン研が、なくなるって。わたしと【ヒビキ】ちゃんの、甘いオタク生活が~!」

 泣きそうな【音無】。と、【ヒビキ】は改めて、部室のドアの貼り紙に目を向ける。

【ヒビキ】「これ? これがその、校則の改正ってヤツなの? ――ええと」

 慌てて貼り紙の文面に目を通す【ヒビキ】。だが、余計に頭を抱え込む。

【ヒビキ】「ふえっ? ……『非実在青少年』って――い、意味わかんない!?」

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■今回のポイント
・トウキョウは本来、マンガやアニメ文化の豊かな土壌となっていた。
・【ナナコ】は良識が求められるはずの立場にいた。
・しかし【ナナコ】は、「オタク=認知障害」という根拠のない差別発言をした。
http://d.hatena.ne.jp/killtheassholes/20091002



ようやく、本題に入ってきました。
……私自身が、「非実在青少年」の言葉を見たときのショックは、今でも忘れられません。
まともに議論するのが馬鹿馬鹿しいなあ、と思ったものです(・・;)

そのあたりのことを、次回から書いていこうと思います。

気力だけが原動力の「でたとこ不定期連載」です。応援コメントをいただけなくても、リンクを貼って紹介してくださるだけでも、十分にやる気が出ます!
どうか、よろしくお願いいたしますノシ

『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』 第一話。

お待たせしました。『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』、本編の始まりです!

■プロローグ
http://hibikiyu.blog113.fc2.com/blog-entry-395.html

↑未読の方はどうぞ、プロローグからご覧ください。
注意書きなども、そちら参照ということでーm(_ _)m



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『もしマンガ・アニメ規制問題が都知事を生徒会長にした学園モノだったら』

■第一話

 翌年、3月上旬。トウキョウ学園での合格発表日。正面玄関脇の掲示板に、受験生たちが朝から詰めかけている。
 そこに遅れて到着するのは、一台の二人乗りのアメリカンバイク。そのバイクを校門前で、女教師の【フジモト】が慌てて止める。

【フジモト】「あ、ダメダメ! 父兄の方でも、バイクは裏門の駐輪場まで回ってくれないと!」

●【フジモト】:トウキョウ学園国語教師、女性。才女タイプ。実は「マンガ研究会」顧問。

 ところがバイクは堂々とその場に停車。運転する革ジャン姿の【ジュンイチ】が、軽く「よっ」と挨拶。つけていたゴーグルをハーフメットに押し上げて、顔を見せる。

【ジュンイチ】「堅いこと言いっこなしだって、【フジモト】センセ! かわいい妹のためなんだ。これくらいお目こぼししてちょーだいよ?」

●【ジュンイチ】:トウキョウ学園卒業生、男。「ヒーロー」を愛する熱いクリエイター。

【フジモト】「って、【ジュンイチ】くん? 久しぶりねー! 元気だったの?」
【ジュンイチ】「ま、ぼちぼちってとこですかねー。センセこそ、相変わらずお元気そうで」
【フジモト】「? でも妹って……あら?」
【ヒビキ】「も、もー! お兄ちゃんったらあっ。だから、裏門でいいって言ったのに!」

 バイクの後ろから、中学のセーラー服を着た【ヒビキ】が降りる。兄の【ジュンイチ】に、借りていた予備のハーフメットを返却する。

●【ヒビキ】:トウキョウ学園を受験した少女。明るいオタク妹キャラ。

【ヒビキ】「恥ずかしいなあ、もうっ。……あ、先生、どうもです。は、初めまして」
【フジモト】「あら、こんにちは。妹さん、って【ジュンイチ】くんの?」
【ヒビキ】「そ、そうです。【ヒビキ】です。兄が、お世話になったみたいで」
【フジモト】「あー、なるほど。じゃあ今年、うちを受験したのね?」
【ジュンイチ】「……ま。今度から妹が世話になるかどうかは、まだわっかんねえですけどね」

 苦笑した【ジュンイチ】、ぽんと【ヒビキ】の背中を押す。

【ジュンイチ】「ほら行ってこいって。お前さん、ちゃんと受験表持ってるよな?」
【ヒビキ】「う、うん。そんなの忘れるわけないじゃん。ちゃんとあるよ」
【ジュンイチ】「じゃあ俺がくれてやったお守りは?」
【ヒビキ】「あれは……だってお兄ちゃんの、昔受験したときのでしょ?」
【ジュンイチ】「そ。俺がトウキョウ学園受かったヤツだから、そりゃあ御利益あるっての」
【ヒビキ】「――お兄ちゃんのバカがうつると困るもん。置いてきちゃった」
【ジュンイチ】「お、おまっ! 俺がせっかく、わざわざ引き出しの奥から発掘したってのに?」
【ヒビキ】「べー。まあ、見てくるね。……大丈夫、あたしお兄ちゃんより勉強できるから。あははっ」

 明るく笑い飛ばした【ヒビキ】、セーラー服の上に羽織ったコートから受験票を取り出し、兄のもとを離れる。やれやれ、といった顔の【ジュンイチ】。
 ただし受験票と一緒に【ヒビキ】、こっそり古ぼけた「合格祈願」のお守りを出している。大事そうに握りしめ、人混みの中の掲示板前へ。

【ヒビキ】(……受かってる。きっと、大丈夫。やれるだけのことはやったし)
【ヒビキ】(あたし、この学校に通うんだ。お兄ちゃんと一緒の、トウキョウ学園に……!)
【ヒビキ】(番号は……ええとっ)

 平静を装いながらも、【ヒビキ】どきどきする。掲示板で自分の受験番号を捜す。
 やがて、発見。

【ヒビキ】「! あっ――」

 何度も確かめる【ヒビキ】。間違いがないことを確認し、満面の笑みに。すぐに人混みの中から抜け出す。校門側にいる、バイクに跨ったままの兄に向かって大きく手を振る。

【ヒビキ】「番号あったー! 合格したー!! やったよ、お兄ちゃーん!!」

 両手で大きな○までつくる【ヒビキ】。兄の【ジュンイチ】が、わかったとばかりに軽く手を振り返してくる。が、ふと【ヒビキ】冷静になる。
 大声を上げた【ヒビキ】に、周囲の視線が集まっていた。さすがに恥ずかしく思い、赤くなる。兄のもとへと駆け出そうとした足が、自然と止まった。
 また、兄に振っていた手の中に、例のお守りがあった。それに気付き、慌ててポケットに隠す。
 そんな【ヒビキ】に声をかけてくる、同じ中学のセーラー服を着た少女が一人。

【音無】「あの……。もしかして、【ヒビキ】ちゃん?」

●【音無】:トウキョウ学園を受験した少女。見た目はおとなしい、黒髪三つ編み娘。

【ヒビキ】「! あれっ、確か……【音無】さん? 隣のクラスだった?」
【音無】「はっ。ごめんなさいごめんなさい! いきなりちゃん付けで呼んだりして! 同じクラスになったこともなかったのに、勝手にっ。でも周りからはそう呼ばれてたし、それでつい……」
【ヒビキ】「ふえっ? ……あ、あー。うん、別に呼ばれ方はどうでもいいけど? でも、その。【音無】さんって、けっこうしゃべるタイプだったんだね? あは、は」
【音無】「ご、ごめんなさい! 名前は【音無】なのに、ちっともおとなしくなくてっ」
【ヒビキ】「もー、謝らなくてもいいってばあ。それより――【音無】さんも、ここ受験してたんだ?」
【音無】「はい……。【ヒビキ】ちゃんも、合格したみたいですね?」
【ヒビキ】「も? も、ってことは。じゃあ――」
【音無】「番号、ありました。わたしも」

 はにかむ【音無】。きゃあ! と【ヒビキ】、思わず彼女と抱きついてはしゃぐ。
 二人、合格した喜びをしばし噛み締めて。

【ヒビキ】「じゃあまた、同じ学校だね! よろしくね!」
【音無】「は、はい。わたし、嬉しいです。……【ヒビキ】ちゃんと、お近づきになれて」
【ヒビキ】「あたしと? そう?」
【音無】「だって……あの。【ヒビキ】ちゃんって、すごく明るくて――わたしなんかとは、まるで違うタイプですから。ご、ごめんなさいっ」
【ヒビキ】「? そんな、【音無】さんなんか、むしろ女の子っぽくてあたしよりぜんぜんいいよー。あたしの方こそ、【音無】さんと友達になれてよかった!」
【音無】「えっ! そ、そんな、もったいないです。……親友だなんてっ」
【ヒビキ】「う、うん? そこまであたし、言ってな」
【音無】「でも、ずっとお知り合いになりたかったんです、わたし。だって、そのう」

 もじもじとする【音無】、ちょっと周囲を気にしながら【ヒビキ】に囁く。

【音無】「わ、わたしも……オタク、ですから」
【ヒビキ】「へ? あー、そうなんだ?」
【音無】「ひ、【ヒビキ】ちゃんみたいにオープンにしたことないですけど。でも、あの。『ジャンプ』は毎週買ってますし、カップリング談義だっていろいろできます! いえ、もちろん受けとか攻めとかネコとかタチとか、そんなのナシでもOKですが!」
【ヒビキ】「ちょっ、濃いよ? いきなり濃いってば【音無】さん?」
【音無】「はっ。ごめんなさいごめんなさい! わたし、つい夢中になって! だって……高校に受かったら、中学のときと違って、リア充オタク生活しようと心に決めてたものですから!」
【ヒビキ】「ふえー。……リア充の使い方が間違ってる気はするけど、うん、いいんじゃない?」

 目をきらきらさせる【音無】に、【ヒビキ】は感心。
 と、あることを【ヒビキ】思いつく。

【ヒビキ】「あ。だったら――ねえ。せっかくだからこのまま、学校の中見ていかない?」
【音無】「えっ。今からですか? 【ヒビキ】ちゃんと、一緒に?」
【ヒビキ】「校舎内には入れないだろうけど、見て回るぶんには怒られないだろうし。なんたってほら、あたしたちは今日からこの学校の生徒なわけだし? あはは」
【音無】「【ヒビキ】ちゃんと一緒……一緒……」
【ヒビキ】「? お、【音無】さん?」
【音無】「も、もちろんご一緒します! たとえ地獄の果てであってもー!」
【ヒビキ】「ちょっ、ないから。ここ地獄じゃなくて、学校だから」

 苦笑する【ヒビキ】、そういえばと振り返る。校門側にいる兄に向かい、叫ぶ。

【ヒビキ】「ごめーん、お兄ちゃん! あたしこれから友達と、ちょっと学校見学してくるー! 帰りは勝手に帰るからー!」
【ジュンイチ】「――ええ? あー、まあ、いいけど?」

 バイクに跨ったまま【フジモト】と雑談して待っていた【ジュンイチ】、肩すかし。
 そんな兄など気にもせず、【ヒビキ】は【音無】と消えていく。その様子を見て【ジュンイチ】、軽く笑う。

【ジュンイチ】「さっそく華の高校生活のスタート、ってとこかね? ま、楽しめばいいさ」

 だが隣にいた【フジモト】、神妙な顔つき。

【フジモト】「ねえ、【ジュンイチ】くん。妹さんって、やっぱり……キミと同じ?」
【ジュンイチ】「? ああ、オタク趣味ってことですかい? そりゃもう。だって俺の妹ですぜ? それでわざわざ、校風のゆるいこのトウキョウ学園に決めたくらいだし」
【フジモト】「そう……」

 おかしそうににやにやする【ジュンイチ】とは違い、【フジモト】は渋い表情のまま。

【フジモト】「だとすると……。がっかりさせるかもしれないわね」
【ジュンイチ】「ん? そいつは、いったい?」
【フジモト】「……。実はね、【ジュンイチ】くん――」

 きょとんとする【ジュンイチ】に、【フジモト】がある内容を話し出す。
 すべてを聞いて、びっくりする【ジュンイチ】。

【ジュンイチ】「――『青少年保護育成』校則? マジですかい!?」

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■今回のポイント
・この物語は【ヒビキ】が主人公。
・【音無】にモデルなし。一般的オタクの代弁者キャラとして、後に機能予定。
・規制は水面下で、かつ異様な早さで行われようとしていた。




と、いうことで。
すみません。今回は、メインキャラの顔見せが中心になってしまいました。

……どうしても、いちいちキャラ立ちを気にしてしまうのは、職業病だと思ってください(・・;)

まあ楽しんでいただけなければ話になりませんし、またそうでないと、私自身も保ちませんので……!
なんとか、二週間に一回のペースを続けていければいいのですがー。


気力だけが原動力の「でたとこ不定期連載」です! 応援していただけると、大変やる気が出ます。よろしくお願いいたします~ノシ